6次産業化とは?売り方から考える加工・直販の進め方
6次産業化とは、農業や漁業などの生産者が、育てた・獲ったものの加工(2次産業)や販売(3次産業)まで自ら手がけ、付加価値をつけて売る取り組みです。加工場や商品から考え始めるより、誰に、どこで、いくらで売るかを先に決めるほうが、作ったのに売れない状態を避けやすくなります。
この記事の要点
- 6次産業化の多くは「加工と直売」の組み合わせ。認定事業計画の68.9%を占める(農林水産省、2026年7月末)
- 農林水産省の追跡調査に回答した認定事業者では、80.3%が売上を伸ばした一方、経営全体の売上高経常利益率は平均−2.2%
- 進める順番は、売る相手 → 販路 → 価格 → 発信 → 問い合わせの受け方 → 作るもの
- 制度の相談窓口は構想の段階から使える。売り方の案を持って行くと計画づくりが具体的になる
6次産業化とは:生産に加工と販売を足して付加価値をつける
6次産業化は、1次産業の農林漁業に、2次産業の加工と3次産業の流通・販売を組み合わせ、生産者の手元に残るお金を増やす取り組みです。1次・2次・3次をひとつの経営の中でつなぐことから「6次」と呼ばれています。
野菜・果物・米・畜産物・魚介などを生産する。
ジャム、干物、漬物、ジュース、総菜などに形を変える。
直売所、通販、飲食店への卸し、農家レストランや体験。
具体的な形としては、規格外の果物をジュースやジャムにして直売所で売る、獲れた魚を干物にして通販で届ける、畑の横で農家レストランや収穫体験を開く、といったものがあります。加工を外の工場に頼み、販売を自社で行う形も6次産業化に含まれます。
制度の面では、2010年(平成22年)12月に「六次産業化・地産地消法」が公布され、生産者が加工・販売に進む計画(総合化事業計画)を国が認定する仕組みができました。農林水産省は令和4年度から、6次産業化を発展させた「地域資源活用価値創出(旧 農山漁村発イノベーション)」として、農林水産物以外の地域の資源も含めて支援しています。最新の内容は「農林漁業の6次産業化(農林水産省)」で確かめてください。
認定事業者の数字に見る、6次産業化の手ごたえと難しさ
農林水産省の調査では、総合化事業計画の認定を受けた事業者の多くが売上を伸ばしている一方で、利益を出すところに苦労している姿が見えます。6次産業化を始める前に、この両面を知っておくと計画の立て方が変わります。
まず、何に取り組んでいるかです。農林水産省の「六次産業化・地産地消法に基づく事業計画の認定の概要」では、2026年7月末までの総合化事業計画の認定は累計2,654件です。事業内容の内訳を見ると、加工したものを自分で売る形が中心です。
次に、取り組んだ後の結果です。同省の「認定事業者に対するフォローアップ調査結果(令和6年度)」(2025年6月公表)は、対象245事業者のうち報告のあった186事業者の、2024年3月時点の直近決算などを集計したものです。項目ごとに有効回答の数は違いますが、申請した時点と比べると次のようになっています。
同じ調査で、回答した認定事業者の経営全体(加工・販売の部門だけでなく事業全体)の売上高経常利益率は平均−2.2%でした。利益が減った理由として最も多く挙がったのは「経費の増加」で、販売の課題としては「取引先からの受注量の減少、販路の縮小」「新規顧客の獲得に苦戦」「営業担当者の人材不足」などが並んでいます。
ここから読み取れるのは、作れるようになることと、利益が残る売り方ができることは別の話だということです。加工場や設備にお金をかける前に、売る先と価格、知らせ方まで決めておくと、売上だけが増えて手元に残らない状態を防ぎやすくなります。
売り方から考える5つの順番
6次産業化を売り方から進めるときは、売る相手・販路・価格・発信・問い合わせの受け方の5つを決めてから、作る商品と量を決めます。順番を逆にすると、商品が先にできてしまい、売り先に合わせた容量や価格に直す手間が後から出てきます。
- 売る相手を決める家族用に買う地元の人か、贈り物を探す遠方の人か、仕入れ先を探す飲食店や小売店か。1つに絞る。
- 販路を決めるその相手がふだん買っている場所(直売所、通販、ふるさと納税、取引先)を選ぶ。
- 価格を決める原料・加工・容器・送料・手数料・自分の時間を積み上げ、相手が比べる商品と並べて決める。
- 知らせ方を決める作り手、原料、季節、食べ方を、写真と短い文で伝える準備をする。
- 受け方を決める注文・ギフトの相談・取引の問い合わせを、どこで受け、誰がいつまでに返すかを決める。
5つが決まると、作る商品の形が自然に絞られます。たとえば贈り物として通販で売るなら、日持ち・箱の大きさ・送料の区分が商品の条件になります。飲食店に卸すなら、量の多い業務用の容量と、毎月同じ品質で出せるかが問われます。
Primap が地方の事業の集客を手伝うときも、最初の月は問い合わせを数える仕組みと受け皿(問い合わせの導線・LINE公式アカウント・Googleマップ)を整え、そのうえで広告を始める順番にしています。集客の土台づくりを最初から通して知りたい方は、地方の中小企業のWebマーケティングの進め方もあわせて読んでみてください。
販路は「誰が、どこで買うか」から選ぶ
6次産業化の販路は、売りたい相手がふだん買い物をしている場所から選びます。販路ごとに、売れる商品の形と、先に用意するものが違うからです。
| 販路 | 向く商品と、先に用意すること |
|---|---|
| 直売所・道の駅 | 少量で手に取りやすい価格のもの。 置いてもらう条件(手数料・納品の頻度・売れ残りの扱い)を確かめる |
| 自社の通販・直販サイト | 日持ちして送れるもの、まとめ買いや定期の注文。 送料・届く日・支払い方法と、注文を受けた後の発送の段取り |
| ふるさと納税の返礼品 | その地域の産品として説明できるもの。 自治体の募集条件と、繁忙期に出荷できる量 |
| 飲食店・小売店・卸(取引先) | 毎回同じ規格で出せるもの。 規格書・価格表・最小ロット・見本を送る段取り |
| 観光客・体験 | その場で味わえるもの、お土産。 営業日と予約の受け方、Googleマップの情報 |
直販サイトの作り方とふるさと納税の出品の手順は「農家の直販の始め方」で、取引先を作るための商談会・展示会の準備は「商談会とは?」で詳しく扱います。
販路は、最初から全部に手を広げないほうが続きます。人の少ない事業者が、直売所への納品と通販の発送と取引先の見積りを同時に回すと、繁忙期にどこかが止まりがちです。1つの販路で注文の受け方と発送の段取りが回るようになってから、次の販路を足していきます。
価格は加工・送料・手数料・自分の時間まで入れて決める
6次産業化の価格は、原料の値段に加工代を足すだけでなく、容器・送料・販売の手数料・広告の費用・自分や家族の作業時間まで入れて決めます。追跡調査で利益が減った理由の最多が「経費の増加」だったように、加工と販売に広げると、生産だけのときには無かった費用が増えるからです。
- 原料: 規格外品を使う場合も、市場に出せば得られた値段を原料の費用として数えているか
- 加工: 自社で加工するなら設備と光熱費、外に頼むなら委託の料金と最小ロット
- 包材: 瓶・袋・箱・ラベル・のし。ギフト用は別に数えているか
- 届ける: 送料・梱包の資材・冷蔵や冷凍の追加料金
- 売る: 直売所・通販の仕組み・決済などの手数料、広告の費用
- 時間: 加工・梱包・問い合わせへの返信にかかる時間を、時給に直して入れているか
積み上げた価格が決まったら、お客様が比べる商品と並べてみます。直売所なら隣の棚、通販なら同じ産地の同じ品目の商品、取引先なら今仕入れている商品が比べられる相手です。積み上げた価格が相手より高いなら、量や容器を変える、販路を変える、作り手や原料の話で違いを伝える、のどれで埋めるかを考えます。値段を下げて合わせる前に、この3つを試すほうが、手元にお金が残ります。
最初の価格は、小さく売って確かめる段階を作ると決めやすくなります。必要な許可や表示を整えたうえで、直売所や知り合いの店で少量を売り、手に取った人の反応や、ギフトとして選ばれたかを見てから、包材をまとめて発注するといった進め方です。
発信は作り手と、食べ方・使い方を伝える
6次産業化の商品の発信では、作り手・原料・季節と、食べ方や使い方を、写真と短い文で伝えます。加工品は棚や画面の上で似た商品と並ぶので、「誰が、どこで、どう作ったか」と「家でどう食べるか」が、選ぶ理由になります。
畑や漁の様子、加工している手元。顔を出したくなければ手元と道具だけでも伝わる。
収穫や水揚げの時期、使った品種や魚種。季節の便りとして毎年出せる。
そのまま、温めて、料理に足して。食べる場面が浮かぶ写真を1枚。
健康への効果をうたう表示は、言い切らずほのめかすだけでも、法律の制限を受けることがある。
健康への効果をうたう表現は、食品でも薬機法や健康増進法の制限を受けることがあります。言い回しを弱めれば済むわけではなく、体験談や写真を含めた表示全体で判断されます。Primap では、商品ページや広告の文をAIに下書きさせても、出す前に人が読み、言ってよい表現と避ける表現の両方を表にして確かめています。
一度買ってくれた人には、次の収穫や新しい商品をLINE公式アカウントで知らせると、改めて探してもらう手間がかかりません。購入後に送るメッセージの組み立て方は「ステップ配信とは?」にまとめています。
広告を使う段階では、写真や動画の素材ごとに結果を分けて見ると、どの伝え方が選ばれているかが分かります。Primap では素材1つにつき広告1つにして、文章を少し変えただけの広告は増やしていません。作り手の話を読み物にして広告から開くページにする方法は「記事LPとは?」で紹介しています。Primap の TANTO ローカルは、農業・水産・食品などの事業者から、広告やページ、LINE の作業を月額の定額でお引き受けしています。
問い合わせと注文の受け方を先に決める
6次産業化で販路を広げると、個人の注文だけでなく、ギフトの相談や取引先からの問い合わせが届くようになります。誰から何が届くかを先に分け、どこで受けて、誰がいつまでに返すかを決めておくと、繁忙期にも取りこぼしが減ります。
| 誰から | 用意しておくこと |
|---|---|
| 個人の注文 | 注文フォームか通販の仕組み、送料と届く日の表、在庫が切れたときの案内文 |
| ギフト・法人の相談 | のし・名入れ・複数の届け先への対応の可否、締め切りの日 |
| 飲食店・小売店・バイヤー | 規格書・価格表・最小ロット・見本の送り方、返信の目安の日数 |
問い合わせの窓口は、電話・メール・フォーム・SNS のメッセージと分かれやすいので、できるだけ1か所に集めます。Primap の自社サイトでも、申込フォームを送った人が見ていたページの名前を通知に添え、社内のチャットとメールの両方で受け取っています。問い合わせの出どころが記録に残ると、次にどの販路や商品に力を入れるかを決める材料になります。
取引先からの問い合わせは、返信が遅れるとそのまま別の仕入れ先に決まってしまうこともあります。収穫や仕込みで手が離せない時期には、自動返信で「何日までに返信します」と伝え、返信の担当と期限を家族や従業員と決めておきます。
制度と相談窓口は、構想の段階から使える
6次産業化の相談窓口は、計画を作る段階から使えます。売る相手・販路・価格の案を持って相談すると、総合化事業計画や交付金の計画書に何を書くかが具体的になります。
- 総合化事業計画: 六次産業化・地産地消法に基づく計画で、各地方農政局などの総合相談窓口で申請の相談を受け付けている。認定されると、資金の借入れや農地法などの手続きで特例を受けられる場合がある
- 交付金: 農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)で、新商品の開発や加工・販売施設の整備が支援の対象になっている。年度ごとの要綱・公募で条件を確かめる
- 都道府県の相談先: 地方農政局の窓口のほか、都道府県ごとの拠点(サポートセンターなど)でも計画づくりの相談を受け付けている
- 食品の許可と表示: 加工品を売るには、品目によって保健所の営業許可や届出、食品表示のルールがある。加工場を新しく作る・改修する前に、品目と作り方を地域の保健所に相談する
申請の様式と地域ごとの窓口は、農林水産省の「総合化事業計画等の申請について」に一覧があります。認定は6次産業化に取り組むための必須の条件ではありません。認定や交付金を使うかどうかは、窓口で相談しながら、事業の規模と設備の計画に合わせて決めます。
よくある質問
6次産業化の「6」はどういう意味ですか?
6次産業化の「6」は、1次産業(農林漁業)・2次産業(加工)・3次産業(流通・販売)をひとつの経営の中で組み合わせることを表しています。生産者が加工と販売まで手がけ、付加価値を自分の手元に残すという考え方です。
6次産業化にはどんな例がありますか?
6次産業化の例には、規格外の果物で作るジャムやジュース、獲れた魚の干物、自家製の漬物や総菜、直売所や通販での販売、農家レストランや収穫体験があります。農林水産省の認定事業計画では、加工と直売を組み合わせた形が68.9%を占めています。
6次産業化のデメリットや課題は何ですか?
6次産業化の課題は、加工と販売に広げることで経費と手間が増え、売上が伸びても利益が残りにくいことです。農林水産省の追跡調査では、回答した認定事業者の経営全体の売上高経常利益率は平均−2.2%で、利益が減った理由として最も多かったのは経費の増加でした。
6次産業化に国の認定は必要ですか?
6次産業化に取り組むために、国の認定は必須ではありません。総合化事業計画の認定は、資金や手続きの特例、支援を受けたいときに申請するもので、相談は各地方農政局などの窓口で受け付けています。
小さな農家や漁業者が6次産業化を始めるには、何からすればいいですか?
小さな農家や漁業者が6次産業化を始めるときは、売る相手と販路を1つに決め、必要な許可や表示を整えたうえで、少量を直売所や知り合いの店で売って反応を確かめるところから始めます。価格と注文の受け方が回るのを確かめてから、包材の大量発注や設備への投資を考えると、手元のお金を守りやすくなります。
まとめ
6次産業化は、生産に加工と販売を足して、付加価値を生産者の手元に残す取り組みです。農林水産省の調査では、売上は伸ばせても利益を残すのに苦労する事業者が多く見られます。商品や加工場から考えるのではなく、売る相手・販路・価格・知らせ方・問い合わせの受け方を先に決め、小さく売って確かめてから広げていきましょう。


