中小企業のWebマーケティング、何から?地方の会社が整える順番

中小企業のWebマーケティングとは、インターネットでお客様に見つけてもらい、問い合わせや注文を受け止め、また来てもらうまでの仕組みを作ることです。人も時間も少ない地方の会社では、施策を増やす前に「問い合わせがどこから来たかを数える」ところから順に整えると、手を付ける順番に迷いません。
この記事の要点
- Webマーケティングの仕事は「見つけてもらう」「受け止める」「つながり続ける」の3つ
- 総務省の調査では、すべての都道府県でスマートフォンでのインターネット利用率が60%を超えている
- 整える順番は、数える → 受け皿 → 見つけてもらう場所 → 広告 → 販路を広げる
- 農業・食品、製造業・工芸、旅館・観光では、力を入れる場所が違う
中小企業のWebマーケティングとは:見つけてもらい、受け止め、つながり続ける
中小企業のWebマーケティングは、「見つけてもらう」「受け止める」「つながり続ける」の3つの役割を、ホームページ・Googleマップ・LINE・広告などに割り振って回すことです。SEO、MEO、SNS、リスティング広告と、施策の名前はたくさんありますが、どれもこの3つのどこかを受け持っています。
商品名や地名で探す人の目に入る。Googleマップ、検索、広告、SNSの投稿。
来た人が迷わず電話・注文・予約できる。ホームページ、申込フォーム、通販のページ。
一度買った人・泊まった人に、次の季節や新しい商品を知らせる。
Webマーケティングの解説では施策が10前後並ぶことがよくありますが、人の少ない会社がそれを全部始めると、どれも中途半端になりがちです。大事なのは、3つの役割に穴が空いていないかを見ることです。たとえば広告で人を集めても、受け止めるページの電話番号が古ければ、お客様はそこで離れてしまいます。
地方の事業では、お客様が2方向にいるのも特徴です。1つは店や宿、工房の近くに住む地元のお客様。もう1つは、通販で買う遠方の人、旅行で訪れる人、取引先を探している他県の会社です。どちらのお客様を先に増やしたいかで、最初に手を入れる場所が変わります。
地方でも、スマートフォンでの利用が当たり前になっている
地方の中小企業にとってもWebマーケティングが欠かせないのは、どの都道府県でも、多くの人がスマートフォンでインターネットを使っているからです。総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、2024年の個人のインターネット利用率は85.6%で、端末別ではスマートフォンが74.4%と、パソコンの46.8%を大きく上回りました。
同じ白書では、都道府県別に見ても、すべての都道府県でスマートフォンでの利用率が60%を超えています。年齢別のインターネット利用率は、13歳から69歳までの各階層で9割を超えています。都市部だけの話ではないので、地元のお客様にも、旅行の前に宿を調べる人にも、スマートフォンの画面で情報を見られることを前提に準備しておくと安心です。
このことから、地方の会社がまず確かめたいのは「スマートフォンで探したとき、正しい情報にたどり着けるか」です。営業時間や定休日が古いまま、電話番号を押してもつながらない、通販のページが小さな画面で読めない。そうした穴は、広告や投稿を増やす前に埋めておくほうが、後の手間が少なく済みます。
人も時間も少ない会社が整える5つの順番
人も時間も少ない会社がWebマーケティングを整えるときは、数える・受け皿・見つけてもらう場所・広告・販路を広げる、の5つの順番で進めると、やり直しが少なくなります。前の段が整っていないと、次の段の結果が読めないからです。
- 数える電話・フォーム・LINE・来店の問い合わせが、どこから何件来たかを残す仕組みを作る。
- 受け皿を整えるホームページや通販のページ、申込フォームを、スマートフォンで迷わず問い合わせできる形にする。
- 見つけてもらう場所を整える店・宿・工房など来てもらう事業は、Googleビジネスプロフィールの情報・写真・口コミの返信を。通販は商品と送料・届く日の情報、取引先を探す製造業は技術と見積りの案内を。リピートにはLINE公式アカウントを。
- 広告で届ける1つの媒体・1つの目的から始め、数えた数字を見て広げるか決める。
- 販路と業種ごとの打ち手を広げる通販、ふるさと納税、商談会、海外からの旅行者など、事業に合う販路に手を伸ばす。
Primap でも、最初の月は計測と問い合わせの導線を整え、そのうえで広告の運用に入る順番にしています。数える仕組みのないまま広告を出すと、問い合わせが増えても減っても、どの手が効いたのか分かりません。人が少ない会社ほど、効いていない作業に時間を使い続ける余裕はありません。
ただし、5つを1つずつ終わらせてから次へ進む必要はありません。1〜3は最初の1か月ほどでまとめて手を入れ、その後は毎月少しずつ直すものです。広告は、1〜3が最低限そろった時点で小さく始められます。
1. 問い合わせがどこから来たかを数える
Webマーケティングの最初の一歩は、問い合わせや注文が「どこから」「何件」来たかを、毎月同じ形で残せるようにすることです。アクセス数やフォロワー数よりも、売上に近い問い合わせの数を先に数えます。
数え方は、問い合わせの窓口ごとに決めます。
- 申込フォーム: 送信された件数と、どのページから送られたかが分かるか
- 電話: ホームページ・Googleマップ・広告のどこで番号を見てかけてきたかを、聞くか分ける方法があるか
- LINE: 友だち追加が、どの案内(店頭のPOP・ホームページ・商品の同梱チラシ)から来たか分かるか
- 来店・来場: 「何を見て来たか」を受付や会計のときに聞き、月ごとにまとめているか
Primap の自社サイトでは、申込フォームが送られると、どのページから申し込んだか・業種と一緒に社内のチャットに通知が届くようにしています。どのページで申し込まれたかが分かるだけでも、問い合わせにつながりやすいページの見当がつきます。広告や記事のどれが最初のきっかけだったかまで追うには、流入元を記録する計測を別に用意します。電話や来店のように機械で数えにくいものは、聞き取りのメモを月に一度表にまとめるだけでも、十分な手がかりになります。
数えた結果をまとめる作業は、できるだけ人の手から外します。Primap では数字の集計とレポートを自動で作り、担当者の時間は広告や制作などの作業に回しています。レポートを仕組みで作る方法は「広告レポートの自動化」で詳しく書いています。
2・3. 受け皿を整え、地元で見つけてもらう
受け皿と地元で見つけてもらう場所は、ホームページの問い合わせ先、Googleビジネスプロフィール、LINE公式アカウントの3つを、同じ情報にそろえるところから整えます。お金をかけずに手を入れられる部分が多く、一度整えれば長く使える土台です。通販が中心の事業や、取引先を探す製造業では、Googleマップよりも商品・技術の情報のページが中心になります(業種ごとの違いは、後の「業種ごとに、力を入れる場所が違う」の節で)。
電話番号・営業時間・申込フォームを、スマートフォンの最初の画面から押せる位置に置く。
名称・住所・営業時間・写真を実際と合わせ、口コミには返信する。
登録してくれた人への最初のメッセージと、季節ごとのお知らせの文面を先に用意する。
Googleマップに出る店や宿、工房の情報は、Googleビジネスプロフィールで管理します。Google は「Google に掲載するビジネス情報のガイドライン」で、実際の名称・住所・営業時間などを正確に載せるよう定めています。検索されやすい言葉を店名に足すような書き方はせず、実際の情報をそろえ、写真を季節ごとに入れ替えるほうが、見る人にとっても分かりやすくなります。
口コミへの返信は、地元のお客様にも、初めて調べる人にも見られます。返信の型と、AIに下書きさせるときの指示は「口コミ返信の例文」にまとめています。返信の文面は、AIに下書きさせても、投稿する前に人が読んで確かめます。
この3つで注意したいのは、情報の食い違いです。ホームページでは定休日が水曜、Googleマップでは木曜、と分かれていると、来た人を迷わせます。定休日や営業時間を変えたときに直す場所を一覧にしておき、変更のたびに全部を直す決まりにしておくと安心です。
4. 広告は1つの媒体・1つの目的から
広告は、1つの媒体・1つの目的・1つの受け皿から始め、数えた問い合わせの数を見ながら広げるかどうかを決めます。最初から複数の媒体に少しずつ出すと、どれも判断できるだけの数字が集まりません。
| 決めておくこと | 決め方の例 |
|---|---|
| 目的 | 「通販の注文」「宿の予約」「工場への見積り依頼」など、数えられる行動を1つ |
| 媒体 | 探している人に出すなら検索広告、まだ知らない人に見せるなら SNS の広告 |
| 受け皿 | 広告から最初に開くページ。商品やプランを1つに絞る |
| 見る数字 | 1件の問い合わせ・注文にかかった広告費。毎月同じ形で比べる |
Primap が広告の運用で決めていることのうち、小さな会社にもそのまま使えるのは次の3つです。1つ目は、1つの素材(画像や動画)につき1つの広告にして、素材ごとの結果を追えるようにすること。2つ目は、文章を少し変えただけの広告を増やさないこと。3つ目は、数字が少なくて判断できないときは、予算や設定を触らないことです。ただし、試す期間と使ってよい広告費の上限は始める前に決めておき、上限に達したときや計測が止まっているときは配信を止めて見直します。どれも、あとで「何が効いたか」を説明できる形にしておくための決まりです。判断の線の引き方は「広告運用の自動化」で詳しく書いています。
広告から最初に開くページを、読み物の形にする方法もあります。商品のこだわりや作り手の話を伝えたい食品や工芸品では、向いていることがあります。作り方は「記事LPとは?」にまとめています。なお、広告の審査で見せる中身と、お客様に見せる中身を変えるような運用は、どの媒体でも規約違反になるため行いません。
5. 業種ごとに、力を入れる場所が違う
地方の中小企業のマーケティングは、業種によって力を入れる場所が違います。地元のお客様が中心か、遠方のお客様や取引先が中心かで、5つの順番の後半の重みが変わるからです。
| 業種 | 力を入れやすい場所 |
|---|---|
| 農業・水産・食品 | 通販・直販のページと LINE でのリピート。ふるさと納税の返礼品や、加工品に広げる6次産業化、バイヤーとの商談会も販路になる |
| 製造業・工芸 | 取引先が技術や設備を調べたときに読めるホームページ。加工の事例(守秘の範囲で)や対応できる材質・ロットを載せ、見積りの依頼を受け止める |
| 旅館・観光 | Googleマップと口コミ、予約の受け皿。海外からの旅行者には多言語の情報と、予約サイト以外からの予約の導線 |
農業・食品では、収穫や仕込みの時期に合わせて発信と広告の山を作れるかが鍵になります。製造業・工芸では、一般の消費者よりも、取引先の担当者が仕様を確かめに来るページかどうかが問われます。旅館・観光では、地図や口コミで比べられたときに、写真と返信の丁寧さで選ばれるかどうかが分かれ目です。
どの業種でも共通するのは、売り込みたい商品を並べる前に、お客様が何を確かめに来るのかを書き出すことです。直販なら送料と届く日、工場なら対応できる材質と納期の目安、宿なら駐車場と夕食の時間。こうした「確かめたいこと」がすぐ見つかるページは、問い合わせの手前で離れる人を減らせます。
このコラムで扱うテーマの地図
TANTO マーケ担当コラムでは、地方の事業のマーケティングを5つのまとまりに分けて、順に記事を出していきます。この記事は、その入口にあたります。
Googleマップの整え方、口コミ返信の例文、LINE のステップ配信。
集客の費用(ホームページ・チラシ・広告)を補助金でまかなう進め方。
6次産業化、農家の直販とふるさと納税、商談会・展示会。
町工場の新規開拓、旅館・観光のインバウンド集客、地域ブランディング。
もう1つのまとまりは、人手不足や家業の引き継ぎ、後継者不足といった経営の悩みから入る記事です。集客の仕組みは、人が足りないときや、次の世代に事業を渡すときにも支えになります。新しい記事を出したら、この地図からもたどれるようにしていきます。
地方の中小企業がつまずきやすい所
地方の中小企業のWebマーケティングでつまずきやすいのは、順番を飛ばして目立つ施策から始めてしまうことです。よく見かける5つの形と、代わりに取りたい手を表にしました。
| よく見かける形 | 代わりに取りたい手 |
|---|---|
| ホームページを新しく作り直すことから始める | 今のページの電話番号・営業時間・申込フォームを直し、数える仕組みを先に入れる |
| SNS を毎日投稿しようとして、数週間で止まる | 投稿は週1回など続けられる回数に決め、Googleマップの写真と口コミ返信を優先する |
| 広告を複数の媒体に少額ずつ出す | 1つの媒体・1つの目的に絞り、試す期間と広告費の上限を決めて、その範囲で判断する |
| 地域の名前を前に出せば売れると考える | 地域の名前は「なぜこの土地のものなのか」の説明とセットで使う |
| 数字を見る日が決まっていない | 毎月見る数字(問い合わせ・注文の数と出どころ)と、見る日を決めておく |
最初の形は特に多く見られます。ホームページの作り直しは費用も時間もかかり、計測を後回しにすると、その期間の判断に使える数字が残りません。今あるページを直して数え始めるほうが、次に何を作るべきかが早く見えます。作り直しが必要かどうかは、数えた結果を見てからでも遅くありません。
4つ目は、地方の事業ならではのつまずきです。産地や地名は大きな強みですが、同じ地域の同業者も同じ言葉を使います。地名に加えて、作り方・素材・人といった自社だけの理由を添えると、比べられたときに選ばれる手がかりになります。
社内に残す仕事と、任せられる仕事
Webマーケティングの仕事のうち、誰に何を売るか・値段・お客様との約束は社内に残し、設定や制作、数字の集計のような作業は外の手や仕組みに任せられます。人の少ない会社では、全部を自社でやろうとするより、この線を先に引くほうが続きます。
| 社内に残す仕事 | 任せられる仕事 |
|---|---|
| 誰に、どの商品を、いくらで売るか | 広告の入稿・設定、数字の集計とレポート |
| 値引き・納期・在庫など、お客様との約束 | バナーやページの制作、写真の手直し |
| 口コミ返信やお知らせを出す前の最終確認 | 返信やお知らせの下書き(AIや担当者) |
| 毎月の数字を見て、続けるかやめるかの判断 | 改善案の洗い出しと比べるための数字の準備 |
任せる相手が社外の会社でも、AIでも、考え方は同じです。下書きや作業は任せ、出す前の確認と判断は社内で持ちます。AIに任せる仕事と人が決める仕事の分け方は「AI業務効率化はどこから?」で詳しく扱っています。
Primap の TANTO ローカルは、地方の事業向けに、上の表の右側にあたる作業を、月額の定額でお受けしています。毎月の定例には経営者か後継者に出ていただき、社内に残す判断はそこで一緒に決めます。社外に頼む先を比べるときは、相手がどこであっても、判断が社内に残る進め方になっているかを契約の前に確かめてください。
よくある質問
中小企業のWebマーケティングは、何から始めればいいですか?
中小企業のWebマーケティングは、問い合わせや注文がどこから何件来たかを数える仕組みから始めます。次に、ホームページの問い合わせ先とGoogleビジネスプロフィールの情報をそろえ、そのうえで広告を1つの媒体から始めると、何が効いたかを判断しやすくなります。
地方の小さな会社でも、Webマーケティングは必要ですか?
地方の小さな会社でも、Webマーケティングは必要です。総務省の「令和7年版 情報通信白書」では、すべての都道府県でスマートフォンでのインターネット利用率が60%を超えており、地元のお客様にも旅行者にも、スマートフォンの画面で情報を見られることを前提に準備しておくと安心です。
マーケティングの担当者がいなくても進められますか?
マーケティングの担当者がいなくても、社内に残す判断(誰に何をいくらで売るか、お客様との約束、出す前の確認)を経営者が持ち、設定や制作、集計を外の手や仕組みに任せれば進められます。最初に「社内に残す仕事」と「任せる仕事」の線を引いておくことが大切です。
広告は最初からいくつかの媒体に出したほうがいいですか?
広告は、最初は1つの媒体・1つの目的から始めるのがおすすめです。複数の媒体に少しずつ出すと、それぞれで判断できるだけの数字が集まりにくく、どれが効いたか分からなくなります。
Webマーケティングの効果はどのくらいで分かりますか?
Webマーケティングの効果が分かるまでの期間は、業種や商品の売れる時期によって変わるため、一概には言えません。計測を整えた月から毎月同じ形で問い合わせの数を比べ、季節の山がある業種では前年の同じ時期とも比べると、効き目を判断しやすくなります。
まとめ
中小企業のWebマーケティングは、見つけてもらう・受け止める・つながり続けるの3つの役割を、少ない人数で回せる形に整えることです。地方の会社では、問い合わせを数える仕組みを最初に作り、受け皿とGoogleマップ・LINEをそろえ、広告は1つの媒体から始める順番が進めやすくなります。そのうえで、農業・食品、製造業・工芸、旅館・観光それぞれの販路に手を広げていきましょう。


