人手不足の対策は?中小企業が集客と問い合わせを回す方法

人手不足の対策とは、足りない人手を「採用で増やす」「辞めないようにする(定着)」「仕事を減らす(省力化)」「外に出す」の4つで埋めることです。従業員の少ない会社では、採用より先に、社長や家族が兼務している集客と問い合わせ対応の仕事を分け直すと、手が空きやすくなります。
この記事の要点
- 日本商工会議所の2026年の調査では、中小企業の60.0%が人手不足と回答
- 従業員20人以下の企業は、21人以上より「事業の縮小・見直し・外注化」を選ぶ割合が高い
- 集客と問い合わせの仕事は、人がやる・仕組みに任せる・外に出す・やめるの4つに振り分ける
- 問い合わせは1か所に集め、受付は自動、返事の下書きはAI、送るのは人と分ける
人手不足の対策とは:採用・定着・省力化・外に出すの4つ
人手不足の対策は、採用・定着・省力化・外に出すの4つに分けると整理しやすくなります。人手不足を扱う記事や解説の多くも、言葉は違ってもこの4つを並べています。
求人の出し方・条件を見直す。シニア・副業・短時間の人など、対象の幅を広げる。
賃金・休み・働き方を見直し、辞める理由を一つずつ減らす。
手作業をデジタルの道具や自動の仕組みに置き換える。
専門の会社や外部の人に、仕事のまとまりごと任せる。
採用と定着は、効果が出るまでに時間がかかります。求人を出してから人が入り、仕事を覚えるまでには数か月かかることも多く、その間も目の前の仕事は減りません。省力化と外に出すことは、今いる人の時間を空ける打ち手です。
もう一つ、従業員の少ない会社で見落としやすいのが「やめる」という選択です。続けているが成果の分からない発信や、誰も見ていない報告書のように、やめても困らない仕事は意外にあります。4つの対策の前に、まず減らせる仕事がないかを確かめると、ほかの打ち手も選びやすくなります。
中小企業の人手不足はどのくらい深刻か
中小企業の人手不足は、日本商工会議所の調査で6割の企業が「不足」と答える水準です。日本商工会議所・東京商工会議所が2026年7〜8月に会員企業2,654社に聞いた「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026年9月15日公表)では、60.0%が人手不足と回答し、そのうち48.2%が事業運営に影響・支障が出ていると答えました。
従業員20人以下の小規模な企業は、人手不足と答えた割合こそ49.1%と全体を下回りました。一方で、不足している企業のうち事業に影響・支障が出ている割合は54.9%と全体より高く、8.2%は廃業や事業継続を懸念していると答えています。人数が少ない会社ほど、1人欠けたときの影響が大きいということです。
別の調査でも、傾向は同じです。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」では、正社員が不足していると感じる企業は51.3%で、7月としては4年連続で半数を超えました。同社の「人手不足倒産の動向調査(2026年度上半期)」では、従業員の退職や採用難などによる人手不足倒産が2026年4〜9月に225件あり、年度上半期として4年連続で過去最多でした。
小さい会社ほど「事業の見直し・外注化」を選んでいる
従業員20人以下の企業では、「事業の縮小・見直し・外注化」で人手不足に対応する割合が31.6%と、21人以上の企業より高くなっています。同じ日本商工会議所の調査で、人手不足への対策を聞いた結果は次のとおりです。
| 調査で分かったこと | 数字(日本商工会議所、2026年) |
|---|---|
| 採用強化の次に多い対策 | 「デジタル活用等による省力化」が40.2%。ただし企業規模が小さいほど回答は減る |
| 従業員20人以下の企業に多い対策 | 「事業の縮小・見直し・外注化」が31.6%。21人以上の企業より多い |
小さい会社でデジタルの省力化が進みにくい背景には、道具を選び、設定し、使い続ける人を置きにくいという事情があると考えられます。省力化は「入れたら終わり」ではなく、誰かが面倒を見続けて初めて効きます。その人がいないなら、仕事を減らす(やめる・見直す)か、仕事のまとまりごと外に出すほうが現実的です。
集客や問い合わせ対応のように、社長や家族が兼務している仕事では、次の順番で整理すると手が空きやすくなります。最初に、やめても困らない仕事をやめる。次に、決まった手順で回る仕事を仕組みに任せる。それでも残る専門の仕事を外に出す。欠員の補充など急ぐ採用は止めずに並行して進め、この整理で見えた「人でなければならない仕事」を求人の中身に反映させます。
採用と定着で、小さい会社が先に見直すこと
採用と定着の対策は、新しい制度を作る前に、求人に書く仕事の中身と、辞める理由になっている仕事を見直すところから始めます。大きな会社と同じ福利厚生や研修をそろえるのは、人の少ない会社には負担が大きいからです。
- 求人に「何の仕事を、どのくらいの量で」頼むかが書けているか(書けないなら、先に仕事の書き出しを)
- 短時間・週数日・副業の人に任せられる仕事を切り出せているか
- 辞めた人・辞めそうな人が負担に感じていた仕事が、特定の人に集まっていないか
- 残業や休日の対応の多くが、問い合わせや電話の対応になっていないか
4つ目は見落とされがちです。営業時間の外に来る電話やメッセージへの対応が、社長や特定の従業員に集まっていると、その人の負担が辞める理由にも、採用できない理由にもなります。問い合わせの受け方を変えることは、省力化の対策であると同時に、定着の対策でもあります。
求人の出し方や条件の見直しは、ハローワークや、地域の商工会議所・商工会などの窓口でも相談できます。採用の手法そのものは求人の専門家に任せ、この記事では、採用と並行して社内でできる「仕事の置き場所の見直し」を中心に扱います。
まず、集客と問い合わせの仕事を書き出す
人手不足の対策の最初の一歩は、社長や家族が兼務している仕事を1週間分書き出し、4つに振り分けることです。中でも集客と問い合わせ対応は、本業の合間に少しずつ発生するため、どれだけ時間を取られているかが見えにくい仕事です。
書き出すときは、仕事の名前だけでなく「何曜日の何時ごろ、誰が、何分くらいやったか」まで残します。1週間続けると、毎日少しずつ取られている仕事と、月に一度まとめて重い仕事の区別がつきます。
| 集客・問い合わせの仕事の例 | 振り分けの目安 |
|---|---|
| 電話・フォーム・LINE の問い合わせへの返事 | 受付の連絡は仕組み、返事の中身は人(下書きはAIに任せられる) |
| 見積り・条件の判断、値引きの判断 | 人がやる(社長か責任者) |
| Googleマップの口コミへの返信 | 下書きはAI、投稿は人 |
| LINE の定期の配信、購入後のお礼 | 文面を決めたら仕組み(自動配信) |
| 広告の入稿・数字の確認・改善 | 外に出す(専門の担当) |
| バナー・チラシ・商品写真の手直し | 外に出す |
| 毎月の数字の集計と報告書づくり | 仕組み(自動で集める)。見て決めるのは人 |
| 成果の分からない SNS の毎日投稿 | やめる、または回数を減らす |
振り分けで迷ったら、次の3つを確かめます。
- お客様との約束(金額・納期・在庫)が含まれるか。含まれるなら、最後は人が決める
- 手順が毎回同じか。同じなら仕組みに任せられる
- やめたら、誰がいつ困るか。誰も困らないなら、やめる候補
この表は、外に出すときの依頼の一覧にも、人を採るときの仕事の説明にもそのまま使えます。
問い合わせ対応を少人数で回す4つの段取り
問い合わせ対応は、「集める」「受付は自動」「下書きはAI」「送るのは人」の4つに分けると、少ない人数でも返事が遅れにくくなります。Primap が自社のサイトや社内のやり取りで使っている段取りを、一般化して並べます。
- 1か所に集める電話のメモ、フォーム、LINE、メールの問い合わせを、社内チャットの決まった場所に集める。Primap では、サイトのフォームから申込があると、どのページから来たか・業種と一緒に社内チャットに届く。
- 受付は自動で返す申し込んだ人には「受け付けました」の自動メールをすぐ返す。中身の返事ではなく、届いたことと、いつごろ連絡するかだけを伝える。
- 返事の下書きはAIに任せる未返信のメッセージを、直近のやり取りと一緒にAIに渡して返信案を作る。指示には「過去の口調・長さに合わせる」「分からない事実は作らず、確認してご連絡しますに留める」と書いておく。
- 送るのは人返信案を読み、金額・日付・約束の言葉を確かめてから、人が送る。AIが自動で送ることはしない。
いちばん効くのは1つ目です。問い合わせが電話・メール・LINE・個人の携帯に散らばっていると、誰が返したか分からず、返し忘れや二重の返事が起きます。1か所に集めたうえで、問い合わせごとに担当者と「未対応・対応中・返信済み」を書き、電話やLINEで返した人もそこを更新する決まりにしておけば、家族や外部の担当者と分担しても、返したかどうかが一目で分かります。
3つ目の指示で大事なのは、AIに分からない事実を作らせないことです。AIは在庫や納期を知らないので、それらしい日付を書いてしまうことがあります。分からないことは空けておかせ、人が埋めてから送ると、下書きを直す手間も小さく済みます。AIに任せる仕事全体の分け方は「AI業務効率化はどこから?」で、口コミへの返信の例文と下書きの指示文は「口コミ返信の例文」で詳しく書いています。
決まった作業は時刻で回し、失敗したときだけ知らせる
毎日・毎週決まった手順で行う作業は、時刻を決めて仕組みに回させ、失敗したときだけ人に知らせる形にすると、見張りの手間がかかりません。うまくいった日まで毎回知らせると、通知が多すぎて、肝心の失敗に気づけなくなります。
公開日を決めた記事は、毎朝決まった時刻に自動で公開。予定がなければ何もしない。
止まったときだけ、担当者のチャットに1行で知らせる。うまくいった日は知らせない。
チャットで来た依頼は、仕組みが確認用まで直し、本番に出すかは責任者が決める。
Primap では、このコラムの記事も、公開日に人がボタンを押すのではなく、毎朝の決まった時刻に仕組みが公開しています。失敗したときだけ担当者のチャットに知らせが届くので、ふだんは誰も見張っていません。
社内チャットで来る細かな依頼も同じ考え方です。Primap では、部屋ごとに「誰の依頼を受けるか」「どこまで直してよいか」を1枚の決まりに書き、仕組みはその範囲で確認用の画面まで作ります。本番に出すのは、責任者が確かめて指示したときだけです。仕組みに任せる範囲と、人が決める線を先に書いておくと、人が少なくても任せることへの不安が小さくなります。広告の予算の調整のように数字で動く仕事の線の引き方は「広告運用の自動化」に書いています。
集客を止めないための土台:計測・LINE・Googleマップ
人が少ない会社が集客を続けるには、人が手を止めても問い合わせが届き、数字が残る「土台」を先に作ります。土台があれば、担当者が休んだ週も、外部に任せた後も、集客が止まりにくくなります。
電話・フォーム・LINEの問い合わせが、どこから何件来たかを毎日数える。
友だち追加のあいさつ、購入後のお礼、定期のお知らせを自動で送る。
Googleビジネスプロフィールの営業時間・写真・口コミの返信を整える。
いちばん先に作るのは計測です。どこから問い合わせが来ているか分からないまま広告や発信を増やすと、人が少ない会社ほど、効いていない仕事に時間を使い続けることになります。計測の設計は「Matomoとは?広告の計測設計とダッシュボード」、LINEで決まった順番に自動で送る設定は「ステップ配信とは?」で解説しています。
土台を作るのは、最初の1か月にまとめて行うのが効率的です。設定は一度決めれば、あとは毎月少しずつ直すだけで済みます。
外に出すときに先に決めておくこと
集客や広告を外に出すときは、窓口・判断の線・数字の見方・引き継げる形の4つを先に決めておくと、任せた後に社内の手間が増えにくくなります。外に出したのに、確認や指示のやり取りでかえって時間を取られる、ということは珍しくありません。
- 窓口をひとつにする広告・制作・LINEで相手が分かれると、社内の連絡がその数だけ増える
- 判断の線を書く金額・表現・お客様への約束など、社内で決めることと任せることを一覧にする
- 数字の見方を決める何の数字を、月に何回、どの画面で見るかを最初に決める
- 引き継げる形で残す設定・手順・数字が会社の側に残るようにし、相手が替わっても続けられるようにする
4つ目は、後継者に事業を渡すときにも効きます。広告のアカウントや計測の設定が外部の担当者の手元にしかないと、相手が替わったときに一からやり直しになります。アカウントの持ち主は会社にし、手順と数字は毎月の報告として残してもらいます。
Primap の TANTO ローカルは、地方の事業向けに、土台づくりから毎月の発信、広告の入稿・運用までを窓口ひとつ・月額定額で引き受けるプログラムです。外に出す先を選ぶときは、どこに頼む場合でも、上の4つが契約の前に決まるかを確かめてください。
人手不足の対策でつまずきやすい所
人手不足の対策でつまずきやすいのは、仕事を減らす前に道具や人を足してしまうことです。よくある形と、置き換えの例を並べます。
| つまずきやすい形 | 置き換えの例 |
|---|---|
| 仕事を書き出す前にツールを入れる | 1週間分の仕事を書き出し、手順が毎回同じ仕事から仕組みに任せる |
| 問い合わせの窓口を増やす(電話・メール・LINE・SNSのDM) | 窓口が増えても、届く先は1か所に集める |
| AIの返信をそのまま送る | 金額・日付・約束を人が確かめてから送る |
| 外に出した後、数字を見なくなる | 毎月見る数字と、見る日を決めておく |
| 採用できるまで集客を止める | 土台(計測・LINE・Googleマップ)だけは先に整えておく |
人が足りないときほど、新しいことを足すより、今の仕事の置き場所を変えるほうが早く効きます。
よくある質問
人手不足の対策は、何から始めればいいですか?
人手不足の対策は、1週間分の仕事を書き出し、「人がやる」「仕組みに任せる」「外に出す」「やめる」に振り分けるところから始めます。採用は効果が出るまで時間がかかるため、先に今いる人の時間を空ける打ち手を選ぶと、採用の準備にも手が回るようになります。
中小企業の人手不足はどのくらい深刻ですか?
日本商工会議所・東京商工会議所の2026年の調査では、中小企業の60.0%が人手不足と回答し、そのうち48.2%が事業運営に影響・支障が出ていると答えています。従業員20人以下の企業では、不足している企業のうち8.2%が廃業や事業継続を懸念しています。
人手不足の解決策として、AIは役に立ちますか?
AIは、問い合わせへの返信の下書きや、数字のまとめのように、文章や情報を整える仕事で役に立ちます。一方で、金額・納期・お客様への約束を決めることはAIに任せず、送る前に人が確かめる形にします。AIに渡す仕事と人が持つ仕事の分け方は、別の記事で詳しく扱います。
集客の仕事を外注すると、社内に何も残らなくなりませんか?
集客を外注しても、広告や計測のアカウントを会社の名義にし、設定・手順・数字を毎月の報告として残してもらえば、社内に残せます。契約の前に「何が会社の側に残るか」を確かめておくと、相手が替わっても続けられます。
人が少ない会社でも、問い合わせに早く返せますか?
人が少ない会社でも、問い合わせを1か所に集め、受付の連絡を自動で返し、返事の下書きをAIに作らせれば、返事の遅れは減らせます。下書きを読んで送るだけなら、本業の合間の短い時間でも返せます。
まとめ
人手不足の対策は、採用・定着・省力化・外に出すの4つですが、従業員の少ない会社では、まず仕事を書き出し、やめる仕事と仕組みに任せる仕事を決めるのが近道です。集客と問い合わせ対応は、1か所に集める・受付は自動・下書きはAI・送るのは人と分けると、少ない人数でも回せます。外に出すときは、窓口・判断の線・数字の見方・引き継げる形を先に決め、会社の側に手順と数字が残るようにしておきましょう。


