AI業務効率化はどこから?マーケ業務で任せる所と人が決める所

AI業務効率化とは、文章・画像・数字の集計など「たたき台を作る作業」をAIと自動化に任せ、人は判断と最終確認に時間を使えるようにする取り組みです。マーケティングでは、下ごしらえはAI、判断と送信・公開は人と線を引くと、誤送信や誤公開のリスクを抑えながら作業を減らせます。
この記事の要点
- AI業務効率化は「どの作業をAIに任せるか」より先に「どこで人が止めるか」を決めると進めやすい
- Primap は、権限を絞る・判断できないときは触らない・承認してから反映する、などの5つのルールで社内のAIと自動化を回している
- 中小企業は「回数が多く、人の確認で止められる作業」を1つ選んで2〜4週間試すところから始める
AI業務効率化とは:下ごしらえはAI、判断は人
AI業務効率化の中心は、人が毎回ゼロから作っていた下書き・集計・整理をAIに先に作らせ、人は「採用するか」「外に出すか」を決める役に回ることです。
生成AIは、文章を書く、画像を作る、長い資料を要約する、表を整える、といった作業を短時間で何本も出せます。一方で、AIは自社の事情や事実の正しさを自分では確かめられません。そこで、仕事を「作る」と「決める」に分け、作る側だけをAIに寄せます。
日本企業の取り組みは、まだ途中です。総務省の令和7年版 情報通信白書は、生成AIを「積極的に活用する方針」または「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている日本企業の割合が、2024年度の調査で49.7%(2023年度は42.7%)だったと報告しています。同じ白書では、中小企業で「方針を明確に定めていない」という回答が約半数を占めるとされています(出典: 総務省 令和7年版 情報通信白書「企業におけるAI利用の現状」)。
方針がまだ無い会社でも、遅れを気にする必要はありません。マーケティングは、文章・画像・動画・数字の集計といった、AIが下ごしらえしやすい作業が多い分野です。どこで人が止めるかを先に決めれば、小さく始められます。社内で使ってよいAIサービスと、入れてよい情報を決めるだけでも、方針づくりの第一歩になります。
マーケティング業務のどこにAIが効くか
AIが効くのは、同じ形の作業を何度も繰り返す所と、案をたくさん出してから選ぶ所です。
マーケティングの仕事を5つの領域に分けると、AIに任せやすい作業と人が持つ判断は次のように分かれます。
| 領域 | AIに任せやすい作業/人が持つ判断 |
|---|---|
| 制作(動画・バナー・記事) | 台本からのカット案、画像の生成、比較案の量産、記事の下書き → どの案を採用するか、表現が事実に合っているか |
| 広告運用 | 入稿作業、数値の取得、ルールにもとづく予算の増減案、改善の候補出し → 提案を承認するか、目標と上限をどう置くか |
| 計測・レポート | 媒体ごとの数値の集約、日報の送信、表への書き出し → 数字をどう読み、次に何をするか |
| 顧客対応 | 口コミ返信、LINE配信、チャット返信の下書き → 送るかどうか、言い回しの最終確認 |
| 社内業務 | 修正依頼への対応、会計データの集計、仕訳の下書き → 本番への反映、登録、経営判断 |
どの領域でも、AIは「たたき台を速く、たくさん出す」役です。逆に、AIに向かないのは、一度きりの判断、根拠が社外にない事実の確認、お金や配信を動かす決定です。ここを人に残すことが、次の章のルールにつながります。
Primap が社内で決めている5つのルール
Primap では、AIと自動化の仕組みを作るとき、次の5つのルールを場面に合わせて入れています。予算の上げ下げのように人が先に決めたルールと範囲の中で自動で動かすものと、停止や除外のように1件ずつ承認を通すものを分けている点が、この5つの土台です。
ルールの多くは、実際に作って動かすなかで「ここで人が止めないと危ない」と分かった所から決めたものです。
AIが使える操作と書き込める場所を最小限にする。
データが足りないときは自動で動かさない。
提案は人が承認したものだけ実行する。
公開・送信・本番反映は人が押す。
5つ目は「本物の素材はAIで描き直さない」です。順に説明します。
ルール1:AIに渡す権限を絞る
社内のチャットには、BOTに修正を依頼できるルームがあります。ルームごとに「誰の指示を受けるか」「どの範囲のファイルを直してよいか」を1枚の設定に書いておき、BOTはそれに従って動きます。BOTの中で動くAIが使える操作は「ファイルを読む・書く」だけで、コマンドの実行や外部サービスへの接続はさせていません。書き込める場所も、設定した範囲に限っています。
| BOTの中のAIに許可していること | 許可していないこと |
|---|---|
| 設定した範囲のファイルを読む・書く 確認用のURLに出す |
コマンドの実行、外部サービスへの接続 設定の範囲外への書き込み、本番への反映 |
社外の人の文面を指示として扱う場面があるため、誤った指示や悪意のある文面で大きな操作が起きないようにするためです。
ルール2:判断できないときは触らない
広告の予算は、案件ごとに決めたルールで毎日自動で上げ下げしています。ただし、キャンペーンと成果の紐付けが確認できないとき、成果のデータが見つからないときは、調整をしません。成果がゼロに見えているだけで実は計測が切れている、という場面で予算を絞らないためです。仕組みの詳しい作りは「広告運用の自動化」で紹介しています。

ルール3:提案は人が承認してから反映する
検索広告の除外キーワードや配信停止などの改善提案は、決めたルールで動く仕組みが候補を出し、Notion に「判断待ち」のタスクとして登録します。広告の設定が実際に変わるのは、人が根拠を確かめて「承認」を押した提案だけです。反映の直前には広告の状態を取り直し、提案を作った時点から変わっていれば反映しません。1日に反映できる件数にも上限を設け、反映したものは元に戻せるようにしています。反映から一定期間がたったら費用や成果の変化を記録し、どのルールを強めるかを人が判断する材料にしています。
ルール4:最後のボタンは人が押す
社内BOTが出すのは確認用のURLまでで、本番への反映は責任者が確認して指示したときだけです。口コミの返信やLINEの配信も、AIは下書きまでです(口コミ返信の例文とAIの使い方)。
ルール5:本物の素材はAIで描き直さない
広告のバナーでは、背景や場面はAIで作り、商品のパッケージや人物は公式の素材をそのまま重ねます。AIに商品を描き直させると、ロゴや成分表示が少しずつ変わり、実物と違う商品を広告に出すことになるからです。
領域ごとの社内での使い方
Primap では、5つのルールを入れたうえで、制作・運用・顧客対応・社内業務のそれぞれでAIを使い、人が入る場面を領域ごとに決めています。
AIは案を何本も出す。採用と修正の指示は人。
仕組みは集計と提案まで。反映は承認後。
AIは返信・配信の下書きまで。
AIは修正案・仕訳案まで。本番と会計は人。
制作:動画・バナー・記事LP
広告の素材づくりは、社内の制作ツールで「生成 → 人が選ぶ → 直す」を1つの画面で回しています。
- AIが案を出す台本や商品情報から、画像・音声・カットの案を何本も作る。
- 人が選ぶ使う案を選び、直す場所と方向を決める。
- AIが直す指示どおりに作り直す。生成の前後には性的表現などの検査をかけ、広告の表現・事実・素材の利用許諾は人が確かめる。
- 人が仕上げを確認する表現・注釈・事実を確かめてから書き出す。
動画は、台本からAIの音声を先に作り、その実際の長さに合わせてカット案を組みます。足りない画像は生成し、人がカットを確認・差し替えてから書き出します。案件ごとに登録した注釈やNGワードは、テロップに自動で反映します(広告動画の編集をAIで進める方法)。
バナーは、構図・利用シーン・見せ方を変えた比較案を出し、人が選んで仕上げます。記事LPは、参考記事と自作の記事を並べて別のAIに厳しく採点させ、指摘を人が読んでから直します。どれも、AIが出した案の中から「どれを使うか」「どこをどう直すか」を決めるのは人です。
広告運用・計測
広告の入稿は Meta と Google 広告の API で行い、既存の広告から設定や文面を引き継いで、命名規則どおりに名前とURLのパラメータを付けます。Google 広告では、入稿後の一定時間、審査の結果を見張って社内のチャットに知らせます。
| 仕組みがやること | 人がやること |
|---|---|
| 入稿、命名、審査の見張り 数値の取得、日報の送信 |
予算の上限と目標を決める 提案を承認し、数字を読んで次の手を決める |
数値は毎朝データ基盤に集め、日報をチャットに送ります。媒体の管理画面を毎回開かずに済むので、担当者は数字を集める時間ではなく、読む時間を取れます。取得が途中で失敗したときは自動でやり直し、それでも取れなければチャットに知らせます。古い数字のまま誰も気づかずに判断する事故を防ぐためです。記事LPは自社で運用しているアクセス解析で、広告のクリエイティブごとにどこで離脱したかまで追えるよう、URLのパラメータの付け方を統一しています。
顧客対応:口コミ・LINE・チャット
口コミの返信やLINEの配信文は、AIに下書きを作らせ、担当者が直して送ります。社内では、未返信のチャットを一覧にしてAIが返信案を作る仕組みも使っています。どれも「送る」操作は人が行い、AIが勝手に送ることはありません。お客様や取引先に届く文面は、一度出すと取り消せないからです。AIの下書きは、言い回しが丁寧でも、事実と違う約束や、店舗の方針と合わない表現が混ざることがあります。担当者は「事実か」「約束しすぎていないか」「お客様の名前や内容を取り違えていないか」を見てから送ります。
社内業務:依頼対応と会計
社内の細かな修正依頼は、上で紹介したBOTが受けます。流れは次のとおりです。
- 依頼する決められたメンバーがBOT宛てに修正を頼む。スクリーンショットやGoogleドキュメントのURLも添えられる。
- BOTが直す「対応します」と返し、確認用の作業場所でAIが修正する。
- 確認用のURLを返す直した内容と確認用のURLをチャットに返す。
- 責任者が反映を指示する本番への反映は、責任者が確認して指示したときだけ行う。
経営の数字は、会計ソフトの仕訳データを取り込んで部門別の損益を見る社内のダッシュボードで確認しています。入出金から仕訳の下書きを作る機能では、取引先ごとのルールで決まらないものだけAIが案を出し、人が確認してから会計ソフトに登録します。税額は引当の目安として扱い、申告の計算は税理士と行います。
中小企業がAI業務効率化を始める順番
中小企業が始めるなら、回数が多く、間違えても人の確認で止められる作業を1つだけ選び、2〜4週間試すのが進めやすい方法です。
- 業務を棚卸しするマーケティングと事務の作業を書き出し、「毎月何回あるか」「文章・画像・集計が中心か」「最後に人が確認できるか」で印を付ける。
- 止める所を決める3つとも当てはまる作業を1つ選び、AIに入れてよい情報、どこで人が確認するか、誰が公開・送信の権限を持つか、止め方を決めて文書にする。
- 小さく試す決めた形で2〜4週間試す。うまくいかなければ、作業の分け方を変える。
- 次の作業に広げる1つ目が回ってから、同じルールで2つ目に広げる。
最初の1つは、次の3つで選びます。
- その作業が毎週、少なくとも数回はある
- AIの出したものを、人が読んで正しいか判断できる
- 間違えても、外に出る前に止められる(公開・送信の前に確認が入る)
たとえば「広告の数字を毎週手で集めている」なら、媒体の数値を1つの表に自動で集め、週1回だけ人が読む形から始められます(広告レポートの自動化)。「口コミやLINEの文面に時間がかかる」なら、AIに下書きを作らせて担当者が直して送る型が向いています。「社内の細かい修正依頼が多い」なら、依頼の書き方を決め、AIが修正案を出して人が反映する形にできます。反対に、契約書の判断や価格の決定のように、1回ごとの判断が重い作業は最初の対象にしません。
効果は「作業時間」と「手戻り」で見る
AI業務効率化の効果は、試す前と後で、その作業にかかった時間と、人が直した回数(手戻り)を記録して比べると判断しやすくなります。時間が減っても手戻りが増えていれば、AIに渡す情報や指示の書き方を見直します。2〜4週間たっても手戻りが減らない作業は、AIに任せる範囲から外す判断も必要です。
社内に担当者を置けない場合は、Primap の「TANTO」のように、こうした仕組みと判断の部分をまとめて外部に任せる方法もあります。
AIに入れてよい情報と社内ルール
AIを業務で使う前に、入れてよい情報、確認する人、公開・送信の権限の3つを社内ルールとして決めておきます。
- AIに入れてよい情報・いけない情報(顧客の個人情報、契約内容、未公開の数字など)
- 使ってよいAIサービスと、契約しているプラン
- AIの出したものを確認する人と、確認する項目
- 公開・送信・本番反映の権限を持つ人
- 自動で動く仕組みが失敗したときに止める人と手順
入れてよい情報を決める
顧客の個人情報、契約内容、未公開の数字などをAIに入れてよいかは、使うサービスの規約とデータの扱いを確認したうえで決めます。迷うものは入れないのが基本です。社内ルールは具体例で書くと迷いが減ります。たとえば「公開済みの商品ページの文章は入れてよい」「お客様の氏名・電話番号・注文番号は入れない」「売上や広告費の実数は、データの扱いを確認したサービスにだけ入れる」のように書きます。
AIの答えを事実として扱わない
生成AIは、もっともらしい誤り(存在しない数字や、根拠のない効能など)を書くことがあります。次の3つは、必ず人が根拠と突き合わせます。
| 確かめるもの | 確かめ方 |
|---|---|
| 商品・サービスの特長 | 社内の資料、試験データ、仕様書と照らす |
| 数字 | 出典(官公庁・媒体の公式資料)を開いて確かめる |
| 法律にかかわる表現 | 景品表示法、業種によっては薬機法の観点で見る |
| AIに資料を渡して要約させるときも、「資料に書かれていないことは書かない」と指示しておくと、もっともらしい付け足しが減ります。広告の表現では、「必ず」「最安」のような言葉がAIの下書きに混ざることがあるため、公開前の確認を省きません。 |
公的なガイドラインを参照する
総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」で、AIを使う立場(AI利用者)が気をつけることを整理しています(出典: 総務省「AI事業者ガイドライン」)。社内ルールをゼロから作るより、このガイドラインの項目を下敷きにすると抜けが減ります。改訂されていくので、最新版を確認してください。
よくある質問
AI業務効率化は無料のAIツールだけで始められますか?
AI業務効率化は、無料のAIツールでも下書きや要約から始められます。文章の下書きは対話型のAI、定型の集計は表計算ソフトや媒体の標準機能、と作業ごとに道具を分けると選びやすくなります。選ぶときは、入れたデータの扱い(学習に使われるか)、費用、いま使っているツールとつなげられるかを規約と料金ページで確かめます。
マーケティングでAIを使うなら、どの業務から始めるのがよいですか?
マーケティングのAI活用は、広告の数字の集計や口コミ返信の下書きなど、回数が多く人の確認で止められる作業から始めるのがよいです。お金や配信を動かす作業は後にします。
AIを使うと情報漏えいが心配です。何に気をつければよいですか?
AI利用の情報漏えい対策は、入れてよい情報を先に決めることが基本です。自動で動く仕組みは、使える操作と書き込める場所を最小限に絞ります。
AIに任せた作業で間違いが出たら、どうすればよいですか?
AIの間違いが見つかったら、まずその自動処理を止め、どこまで影響が出たかを確かめて直します。外に出てしまった場合は、訂正を出し、関係する人に連絡します。原因が分かるまで再開せず、同じ間違いが直らない作業はAIに任せる範囲から外します。
まとめ
- AI業務効率化は「下ごしらえはAI、判断と送信・公開は人」と線を引くと進めやすい
- Primap は、権限を絞る・判断できないときは触らない・承認してから反映する・最後のボタンは人・本物の素材は描き直さない、の5つのルールで社内のAIと自動化を回している
- 中小企業は、回数が多く人の確認で止められる作業を1つ選び、2〜4週間試してから広げる
- 入れてよい情報、確認する人、公開・送信の権限を社内ルールとして先に決める

