営業KPIとは、契約件数や売上という最終の目標に向かって、営業が順調に進んでいるかを途中で測る数字です。太陽光・蓄電池の反響営業では、問い合わせ(反響)→ 本人と話せた(接続)→ 現地調査(訪問)→ 見積もり → 契約の5つの段に分けて件数と率を取ると、どこで止まっているかが見え、直す場所を決められます。
この記事の要点
- 反響営業の KPI は「反響・接続・訪問・見積・契約」の5段の件数と、段と段の間の率
- 何を「1件」と数えるかを先に決めて、毎月同じ決まりで数える
- 契約の目標から逆算すると、必要な反響の数と、1件の反響にかけてよい費用が出る
- 数字は1件1行の問い合わせ台帳で取る。広告やチラシの出どころも同じ行に書く
- 件数が少ないうちは、3か月まとめて読む。出どころ別・地域別に分けて読む
数字を取る目的は、担当者を責めることではなく、次に何を直すかを決めることです。この記事では、施工店の社長・営業責任者が、明日から付けられる形にまで落とし込みます。
営業KPIとは、契約までの途中を測る数字
営業KPIは、最終の目標(KGI)にたどり着くまでの途中の数字です。KGI が「今月の契約件数」や「売上」なら、KPI はそこに向かう問い合わせの数や、訪問できた数、見積もりから契約になった割合などです。

| 種類 | 太陽光・蓄電池の反響営業での例 |
|---|---|
| KGI(最終の目標) | 月の契約件数・売上・粗利 結果なので、月末にならないと分からない |
| KPI(途中の数字) | 反響の件数、接続率、訪問化率、見積率、成約率 月の途中でも見られ、手を打てる |
| 行動の数字 | 電話をかけた回数、追客の連絡回数 KPI を動かすための手段で、これだけを目標にしない |
飛び込み営業が中心の施工店では、「何件訪ねたか」という行動の数字と、「何件契約したか」という結果の数字だけを見ていることがよくあります。反響営業では、その間にある段の数字が増えます。途中の段の数字があるから、どこを直すかが決められると考えると、何を数えるべきかが見えてきます。
上位の解説記事でよく紹介される「KPIツリー」(目標の数字を掛け算・足し算で分けていく図)も、反響営業では次の5つの段に分けるのが分かりやすい形です。
反響営業で数える5つの段
太陽光・蓄電池の反響営業は、反響 → 接続 → 訪問 → 見積 → 契約の5つの段で数えます。大事なのは、それぞれの段で何を「1件」とするかを先に決め、毎月同じ決まりで数えることです。

- 反響フォーム・電話・LINE・チラシの返信などで、家の人から届いた問い合わせ。同じ人の重複は1件にまとめる。
- 接続問い合わせた本人と話せて、相談したいことと住まいの条件(戸建てか、持ち家か、地域)を聞けた状態。
- 訪問現地調査やご自宅での説明の約束を取り、実際に伺えた件数。約束だけでキャンセルになったものは別に数える。
- 見積シミュレーションと見積書を、家の人に渡して説明できた件数。
- 契約契約書を交わした件数。クーリング・オフや解約になったものは、あとで引けるように印を付けておく。
決まりがあいまいだと、月によって数え方が変わり、率の上下が数え方のせいなのか営業のせいなのか分からなくなります。迷いやすいところを先に決めておきます。
| 迷いやすいところ | 決めておく例 |
|---|---|
| いたずら・営業電話・間違い | 反響に数えない 台帳には残し、「対象外」の印を付ける |
| 集合住宅・賃貸・営業地域の外 | 反響には数え、「対象外」の印を付ける 広告の配信先を直す材料になる |
| 同じ人が2回問い合わせた | 1件にまとめる 2回目の出どころは備考に書く |
| 電話がつながらず SMS で日程が決まった | 接続に数える 相談内容と住まいの条件が聞けていれば同じ扱い |
| 訪問の約束後にキャンセル | 訪問に数えない 「約束」と「伺えた」を分けて記録 |
「対象外」を反響に数えるかどうかは、どちらでもかまいません。ただし、一度決めたら変えないことと、対象外の件数も必ず見ることが条件です。対象外が多いなら、それは営業ではなく、広告やチラシの届け先の問題だからです。
段ごとの率の出し方と計算例
段ごとの件数がそろえば、段と段の間の率を出せます。率は「次の段の件数 ÷ 前の段の件数」で計算します。商談化率(ここでは訪問化率)や成約率は、どの段を分母にするかで数字が大きく変わるので、社内で式を1つに決めておきます。

ここからは、わかりやすくするための仮の数字で計算します。例えば、ある月の反響が40件だったとします。
| 段(件数は仮の例) | 率の式と計算 |
|---|---|
| 反響 40件 | ― |
| 接続 32件 | 接続率 = 接続 ÷ 反響 32 ÷ 40 = 80% |
| 訪問 16件 | 訪問化率(商談化率)= 訪問 ÷ 接続 16 ÷ 32 = 50% |
| 見積 14件 | 見積率 = 見積 ÷ 訪問 14 ÷ 16 = 約88% |
| 契約 4件 | 成約率 = 契約 ÷ 見積 4 ÷ 14 = 約29% |
| 全体 | 全体の歩留まり = 契約 ÷ 反響 4 ÷ 40 = 10% |
この例では、反響の10件に1件が契約になっています。これが「全体の歩留まり」です。全体の歩留まりだけを見ても、どこで止まっているかは分かりません。段ごとの率を並べることで、例えば「接続までは進んでいるのに、訪問の約束が半分しか取れていない」といった止まり方が見えます。
成約率という言葉は、記事や会社によって「契約 ÷ 商談」「契約 ÷ 見積」「契約 ÷ 反響」などいろいろな意味で使われます。社内の会議で「成約率が下がった」と話すときに、みんなが同じ式を思い浮かべられるように、台帳の上に式を書いておくと誤解がなくなります。
契約の目標から逆算する
KPI の目標は、契約の目標から逆算して決めます。全体の歩留まりが分かれば、「月に何件契約したいなら、何件の反響が必要か」と「1件の反響にいくらまでかけてよいか」が計算できます。
- 契約の目標を決める施工の体制で無理なく工事できる件数から決める。例えば月5件。
- 必要な反響の数を出す契約の目標 ÷ 全体の歩留まり。例えば 5件 ÷ 10% = 50件。
- 1件の契約で残る粗利を出す機器・工事・申請の手間を引いた粗利。例えば仮に1件60万円。
- 反響1件にかけられる上限を出す粗利 × 全体の歩留まり。例えば 60万円 × 10% = 6万円。これを超えると、集めるほど赤字になる。
- 実際の目安を決める上限の全部を広告に使うと利益が残らないので、上限の何割までにするかを決める。例えば半分なら3万円。
仮の数字で続けると、反響50件 × 3万円 = 月150万円が、広告やチラシに使える費用の目安になります。逆に、使える費用が月50万円なら、反響1件3万円で約16件、歩留まり10%なら契約は1〜2件の見込みです。
この計算で分かるのは、歩留まりが上がれば、1件の反響にかけられる費用も上がるということです。営業の段の率を1つ上げることは、広告を安く集めることと同じくらい、集客の幅を広げます。
先ほどの仮の例で確かめます。反響40件のまま、訪問化率だけを50%から60%に上げられたとすると、訪問は32件 × 60% ≒ 19件になります。見積率と成約率が同じなら、契約は約4.8件、全体の歩留まりは約12%です。反響1件にかけられる上限も、60万円 × 12% ≒ 7.2万円に上がります。どの段の率を1つ上げても、同じように上限が動きます。
広告を始めるときの予算や地域の決め方は「太陽光・蓄電池の Web 広告」で扱います。
なお、ここで出した数字はすべて計算のための仮の例です。御社の歩留まりは、過去の契約を台帳に起こしてから計算してください。
数字の取り方:問い合わせ台帳
KPI の数字は、問い合わせ1件を1行にした台帳で取ります。表計算ソフトで十分です。営業管理のシステムを使う場合も、まずは表で項目と決まりを固めてから移すと、項目が足りない・多すぎるという失敗を避けられます。
台帳に入れる項目の例です。
- 受付の日時(何時に届いたか。最初の連絡までの時間を出すため)
- 出どころ(Web広告・チラシ・Googleマップ・自社サイト・紹介・一括見積もりサイトなど)
- 出どころの細かい情報(どの広告・どの記事・どのチラシの版か)
- 都道府県と市区町村、戸建てか、持ち家か、太陽光が設置済みか
- 相談したいこと(補助金・停電・電気代・卒FIT など)
- 最初に連絡した日時と、接続できた日時
- 訪問の約束日と、伺えたかどうか
- 見積もりを渡した日と金額
- 結果(契約・検討中・失注・対象外)と、失注の理由
1行の書き方のイメージです(中身はすべて架空の例です)。
| 項目 | 記入の例 |
|---|---|
| 受付 | 10月3日 19:42、Webフォーム |
| 出どころ | Web広告/蓄電池の補助金の記事(版 B) |
| 住まい | ◯◯市、戸建て、持ち家、太陽光は設置済み(設置から10年目) |
| 相談したいこと | 補助金と、卒FIT 後の電気の使い方 |
| 連絡と接続 | 10月3日 19:55 電話(不在)→ SMS → 10月4日 9:10 接続 |
| 訪問 | 10月8日 約束 → 伺えた |
| 見積 | 10月12日 提出 |
| 結果 | 検討中(家族と相談。10月19日に連絡の約束) |
失注の理由は、自由に書くと集計できなくなるので、「価格」「補助金の条件に合わない」「他社に決めた」「時期を延期」「連絡が取れない」のように選ぶ形にして、細かい事情は備考に書きます。理由の数が月ごとにたまると、成約率の打ち手を選ぶ材料になります。
出どころは、問い合わせのフォームで自動的に取れるようにしておくと、記入漏れがなくなります。Web広告から来た問い合わせなら、広告のリンクに付けた目印(どの広告・どの記事の版か)をフォームの隠し項目で受け取り、台帳に残す方法があります。Primap が広告を運用するときも、申し込みがどの広告・どの記事の版から来たかは、この「申し込み時に残る目印」で見ています。申し込みの時刻と広告の管理画面の時刻を突き合わせる方法は、ずれが出やすいので使っていません。
広告の管理画面に出る「コンバージョン(成果)」の数は、台帳の反響の数と一致しないことがよくあります。Google 広告では、注文や問い合わせの送信など、事業にとって価値のある行動をコンバージョンとして測ると説明しています(出典: Google 広告 ヘルプ「コンバージョン測定について」)。測り方の設定や、広告の審査のためのアクセスが混ざるかどうかで数がずれるため、Primap では判断に使う数字を自社の計測と台帳にそろえ、媒体の数字はそれと並べて見るようにしています。
フォームを送った数などを媒体ごとの数え方で出す。重複や、審査のためのアクセスが混ざることがある。
1件ずつ中身を確かめた数。接続・訪問・契約まで同じ行で追えるので、歩留まりが出せる。
さらに一歩進めると、台帳の「契約になった」という結果を広告に返すこともできます。Google 広告の「オフライン コンバージョンのインポート」は、広告のクリックのあとに店舗や対面で起きた成約などを、広告と結びつけて測る仕組みです(出典: Google 広告 ヘルプ「オフライン コンバージョンのインポートについて」)。問い合わせの数ではなく契約に近い問い合わせを基準に配信を調整できるようになるので、反響の数が月に一定以上たまってきたら検討する価値があります。
詰まっている段から打ち手を決める
段ごとの率が出たら、いちばん低い段、または先月から大きく下がった段から手を付けます。段によって原因と打ち手がほぼ決まっているので、表にしておくと会議で迷いません。
| 下がっている段 | 考えられる原因と打ち手 |
|---|---|
| 接続率(反響 → 接続) | 最初の連絡が遅い、電話に出てもらえない時間帯にかけている 最初に連絡する人を現場と分ける、つながらなければ SMS で折り返しの時間を伝える |
| 訪問化率(接続 → 訪問) | 対象外の家が多い、相談したいことと話の中身がずれている 広告の配信先と書き方で対象をはっきりさせる、電話で相談の理由を先に聞く |
| 見積率(訪問 → 見積) | 現地調査のあとの資料づくりに時間がかかる シミュレーションと見積もりのひな形を用意し、渡す日を訪問の場で決める |
| 成約率(見積 → 契約) | 補助金・費用・停電時の使い方の説明が足りない、見積もり後の連絡が途切れる 説明の資料をそろえる、見積もり後の連絡の間隔を決めて守る |
| 反響の数そのもの | 集め方が1つしかない、季節や補助金の受付時期の影響 集め方を足す、補助金の受付の時期に合わせて準備する |
接続率と訪問化率の打ち手のうち、最初の電話の台本や、つながらないときの SMS・メールの文例は「問い合わせへの初回対応と追客」にまとめています。
訪問化率が低いときは、営業の腕より先に、問い合わせの中身を見てください。台帳の「戸建てか・持ち家か・地域」の列を見ると、対象外の家がどれくらい混ざっているかがすぐ分かります。Primap では、住宅の広告で対象(戸建て・持ち家・地域など)を絞るとき、対象でない人を対象と読めるような書き方や、申し込みまで進めてしまう作りにしないことを決めています。届け先を絞ると反響の数は減ることがありますが、訪問化率と成約率が上がれば、契約の数はむしろ増えることがあります。
少ない件数で読み違えない
反響の数が月に数十件までのうちは、率が大きく振れます。1件の契約が増えるか減るかで、成約率が何ポイントも動くためです。件数が少ない時期に、1か月の率の上下だけで営業のやり方や広告を大きく変えると、たまたまの振れに振り回されます。
月の件数が少ないうちは、直近3か月の合計で率を出す。毎月、1か月ずつずらして見る。
広告・チラシ・紹介では率が違う。全体の率だけを見ると、どれかの変化が埋もれる。
対象外を含む率と、除いた率の両方を出す。差が大きければ届け先の問題。
月半ばの数字で「今月は悪い」と決めない。見積もり中の家は、月末まで結果が出ない。
Primap が広告の運用で決めていることも、同じ考え方です。成果の件数が少ない広告は、1日の途中の数字で予算を動かさず、1日が終わってから判断し、件数が少なすぎる日は判断そのものをしないようにしています。また、比べるときは、スマートフォンとパソコンのように性質の違うものを分けて読みます。全体の数字で見ると、片方の結果が埋もれてしまうためです。
会議で見る順番と担当者の評価
KPI は、見る順番を決めておくと会議が短くなります。週の会議は「止まっている家」を動かす場、月の会議は「率」を見てやり方を直す場、と分けるのがおすすめです。

- 週:止まっている家を見る接続できていない反響、訪問の約束がない接続、見積もり後に連絡が途切れている家を、台帳から1件ずつ確認し、だれがいつ連絡するか決める。
- 月:段ごとの率を見る直近3か月の率を、先月までの3か月と並べる。いちばん下がった段を1つ選ぶ。
- 月:打ち手を1つ決める選んだ段の打ち手を1つだけ決めて、翌月に試す。いくつも同時に変えると、どれが効いたか分からない。
- 月:出どころ別に見る広告・チラシ・紹介ごとの反響の数と歩留まりを見て、来月の集め方の配分を決める。
担当者の評価に KPI を使うときは、その人が動かせる数字で評価します。最初の連絡を受け持つ人なら接続率と訪問の約束の数、訪問と提案を受け持つ人なら成約率、というように、段ごとに受け持ちを分けて見ます。反響の数や、対象外の多さは、広告やチラシの届け先で決まる部分が大きいため、営業担当の評価に入れると不公平になります。
営業担当の役割の分け方や、評価・給与の考え方を飛び込み中心から切り替える方法は「飛び込み営業からの切り替えと営業体制」で詳しく扱っています。
よくある質問
営業KPIとKGIの違いは何ですか?
営業KPIとKGIの違いは、測るタイミングです。KGIは月の契約件数や売上など最終の結果を表す数字で、KPIはそこにたどり着くまでの途中(反響・接続・訪問・見積の件数や率)を表す数字です。
成約率は何で割ればいいですか?
成約率の分母は、社内で1つに決めれば、どれを使ってもかまいません。太陽光・蓄電池の反響営業では「契約 ÷ 見積」を成約率、「契約 ÷ 反響」を全体の歩留まりとして分けて呼ぶと、段ごとの見直しがしやすくなります。
商談化率とは何ですか?
商談化率とは、問い合わせや接続のうち、商談に進んだ割合のことです。太陽光・蓄電池の反響営業では、現地調査や自宅での説明に伺えた件数を商談と数え、「訪問 ÷ 接続」で出すと、最初の電話の出来をそのまま測れます。
反響が少ない月でも KPI を見る意味はありますか?
反響が少ない月でも、KPI を記録しておく意味はあります。1か月だけでは率が振れて判断しにくいので、直近3か月の合計で率を出し、出どころ別に分けて読むと、件数が少ない時期でも直す段を選べます。
まとめ
太陽光・蓄電池の反響営業の KPI は、反響・接続・訪問・見積・契約の5段の件数と、段と段の間の率です。まず何を1件と数えるかを決め、1件1行の台帳で出どころと結果を記録します。
率が出たら、契約の目標から必要な反響の数と、1件の反響にかけてよい費用を逆算し、いちばん下がった段から打ち手を1つずつ試します。反響営業の全体の順番は「反響営業とは」にまとめています。
